お気に入りが台無し
1977年8月7日の夕方、北海道 旅行にきていた私は札幌の繁華街を歩いていた。
黒い雲が南の空を覆って、異様に暗かった。
雨が降り始めたが、小雨だったので、私は傘をたたんだまましばらく歩き続けたが、やがて、降っているのがただの雨ではなく、みぞれのような白い粒であるのに気がついて、あわてて傘をひろげた。
しかし、もうおそかった。
上衣がすでに、灰色のしみだらけになっていた。
うかつにも、その時はじめて、南の空の黒雲が雨雲ではなくて、有珠火山が吹き上げている灰だということに、私は気がついたのであった。
昼間、爆発のニュースを聞いてはいたが、札幌まで灰がやってくるとは夢にも思わなかったのだ。
有珠周辺では、それどころではなかった。
麓の洞爺湖温泉街は泥流に見舞われて大きな損害をこうむり、その後数カ月以上も、客足が途絶えて死んだような町となった。